目的とアプローチの特徴
本研究室は,臓器・組織由来の細胞を生体外にて様々な大きさにて三次元組織化・再構築し,再生医療や薬・化学物質等の動物フリーの影響評価といった用途に使用することを大きな目標としています.生体の臓器組織では,
- 細胞が階層的に高密度かつ3次元的に組織化されているにも関わらず,
- 血管網の配備により良好な機能発現が達成されていますが,
目的とアプローチの特徴
本研究室は,臓器・組織由来の細胞を生体外にて様々な大きさにて三次元組織化・再構築し,再生医療や薬・化学物質等の動物フリーの影響評価といった用途に使用することを大きな目標としています.生体の臓器組織では,
本研究室の根幹の問題意識は,“移植や人体影響評価といった用途で求められる様々なスケールに合わせて,上記の問題を如何に解決していくか”,であり,化学システム工学的方法論を基盤とすることが極めて重要であると考えています.例えば,再生医療のための大型組織の再構築を本当に目指すとすると,分岐合流を繰り返す最小限の血管様の構造の配備と酸素運搬体を入れた培養液の連続灌流が必要となります.一方,薬や化学物質評価のための小さな組織としては,細胞が組織としての働きを示すようになる最小限の三次元集団化を図りつつも,生体と同様の代謝速度が再現されるようにすることが大切です.化学工学的方法論は,培養スケールの大小に関わらず,酸素や栄養素・老廃物,外部から添加された様々な物質およびその代謝物等の輸送(流れ・拡散)や反応について,メカニズムに基づいた定量的な扱いとその最適化を可能とします.
一方,再生医療や物質の影響評価のための組織構築のためには,最終的には様々な免疫型を持ったヒト幹細胞・臓器前駆細胞の増殖分化・成熟化制御等に関する最新の理学・生物学的知見,マイクロパターニング・マイクロ流体デバイス・微細造形・マテリアルなどに関する最新の工学的技術,疾患や治療時の人体代謝およびその応答変化等に関する医学・薬学的知見と技術をバランスよく融合活用することが必須です.もちろん一つの研究室で全てをカバーすることは不可能であるため,必要に応じて学内外の他グループとも広く共同研究を進めています.
このように必須である融合活用を通じて最終目的を達成するためには,化学システム工学の別の特徴である,“課題解決型思考”や“最適化思考”がとても役に立ちます.その考え方の基本は,まず目的達成から出発して,次に必要な様々な知見・技術を達成までの道のりに最適配置し,最後にそのロードマップに合わせて実際の融合利用を進める,ということです.このように考えておけば,実現までの時間を最短にすることができるばかりでなく,たとえ途中で予期せぬ画期的な発見がなされた場合でも,目的達成のためのその寄与可能性を冷静に判断できることでしょう.このように,化学システム工学的アプローチは,再生医療や細胞アッセイ系の両者において,応用の観点から基礎知見を冷静に判断し,工学的技術と加えることにより,医学・薬学での応用への橋渡しをする上で,極めて重要です.つまり,社会への成果還元という最終局面の直前において,その力は最大限発揮されると考えています.
工学者が人体を扱う場合,その専門分野に応じて大きくは代謝系または化学系(内胚葉系組織)・力学系(中胚葉系組織)・情報系(外胚葉系組織)の3つの側面からのアプローチが代表的なものです.広い意味で化学系に属する本研究室では,“代謝系または化学系としての人体システム”,すなわち,物質の反応や輸送に関わる組織臓器を当面の研究の対象としています.具体的な研究のアプローチとしては,再生医療ならば肝・膵・腎など,物質の影響評価系としては,小腸・肺・肝・腎など,となります.これらの臓器を形成しえる幹細胞・前駆細胞を,目的に応じたスケールにて,物質交換に配慮しながら設計し,最新の工学的技術を取り入れつつデバイスやシステムとして仕上げる,ということとなります.
本研究室は,細胞からの三次元組織構築に興味があり,応用面からアプローチをしてみたいという方を強く歓迎します.修士課程・博士課程とも,本学だけでなく広く人材を求めています.博士研究員はその時の予算状況に応じて採用します.どちらの場合でも研究室見学は随時受け付けていますので,酒井(sakaiyasu(アットマーク)chemsys.t.u-tokyo.ac.jp)または講師の西川(masaki(アットマーク)chemsys.t.u-tokyo.ac.jp)までお気軽にご連絡下さい.両課程とも,主専攻である工学系研究科・化学システム工学専攻(http://www.chemsys.t.u-tokyo.ac.jp/)に加えて,同・バイオエンジニアリング専攻(http://www.bioeng.t.u-tokyo.ac.jp/)の入学も可能です.両専攻は,取得すべき授業や単位・修士論文への要求が大きく異なるので,慎重に選択をしてください.研究室内でのテーマ設定には区別はあまりありませんが,バイオエンジニアリング専攻の学生としての研究では,より生物工学的・医学的意義を重視した指導を行ってきています.
本研究室では,上述のように,臓器組織細胞の培養を基本としながらも,“目的達成に向けた技術融合”をアプローチの大きな特徴としています.各自の研究を通じて,このような思考をぜひ身に着けてほしいと日々アドバイスを行っています.このような訓練を経ておけば,たとえ全く異なった分野で仕事を行うことになった場合でも,恐れることはないでしょう.
耕すこと(教育)、太い幹をつくること(研究)に責任をもって取り組みます。
大きな花(研究成果)が良い土(人材)をつくる好循環を育みます。
ラボメンバー全員が、人生をかけて大木を育て、大きな花を咲かせて欲しいと思っています。
移植可能な臓器の生体外での再構築を目指します。特殊な技術を用いたインスタント細胞・組織・臓器の構築に取り組んでいます。また、培養前駆細胞からの腎オルガノイド構築や、生体外での血管導入を試みています。
ソフト 創薬・治療: 生体のモデル化(培養モデル・数理モデル)生体のモデル化により、効率的かつ科学的合理性のある創薬や各種疾患の治療法確立を目指します。
肝・腎・腸など、薬物の体内動態を決定する臓器に着目し、培養モデルの構築に取り組んでいます。また、代謝反応、細胞、臓器、生体レベルの多階層現象について、メカニズムベースの数理モデル構築に取り組んでいます。
特に、生活習慣病・老化・ガンなどの疾患や、生命現象そのものに直結するエネルギー代謝に着目し、培養モデルから得られたデータを数理モデルで統合することで、生体レベルの疾患の制御と治療を目指しています。
上記の視点から自分も含めたメンバーそれぞれの成長と教育効果を定量化し、課題の明確化と改善を図ります。